「消失」


音を買って外へ出ると

スーツがゆっくり横切る


「...がない......しょが...い........ばしょがない...」

いばしょがない...居場所がない...居場所が―」

しな垂れた頭

その重みだけで身を運び

意思なき足に左右へ振られ

住宅街の方へと消え失せた


深夜

クジラの声をはじめて聴いた

遠のく希求が存在の果て

深海が揺れる

返事はない